〈ひかり〉夕暮れに佇む

〈ひかり〉は入居者さんの家でありたいと思っています。ですが、入居者さんにとってここは、やはり仮の住まい。入居者さんが、住み慣れた我が家を恋しいと思ことは、とても自然なことだと私たちは考えます。
 自分が生まれ育った場所への強い思いを持ちながら、それでも〈ひかり〉に馴染もうとしてくださっている入居者さんに、私たち職員は感謝するばかりです。

 職員にできることは、入居者さんの気持ちを傾聴することにつきます。
 傾聴するということは特別なことではなく、多くを語らず、説得をせず、入居者さんの言葉に耳を傾け、決して否定しないこと。
「家に帰りたい」
 と、言われる利用者さんに対しては、
「そうですね」
 と、その人の思いをそっと抱きしめるように大切にして、その人の気持ちになってこたえること。それが基本だと考えています。
 利用者さんの気持ちになるということは、粘り強く、その想いに耳を傾けることであって、職員の気持ちを伝えることではありません。言葉を尽くして、職員が思いを伝えても、それはおそらく届かないでしょう。そんなことよりも、しっかりと入居者さんの話を聞くことこそ求められることです。

 今回のブログタイトルを「夕暮れに佇む」としたのは、陽が暮れて、誰もが家に帰るその時刻、夕闇の薄明りの中にひっそりと佇む〈ひかり〉の建物が、あるいは入居者さんの想いとどこか通じるのではないかと、そんな気がしたからです。感傷的すぎるかもしれませんが。

 私たちにはできないことが数多くあります。入居者さんの思いを知ることができても、こたえることができない場合の方が多いということを、この仕事をしていればいやでも感じます。
 自分たちはこれだけのことをしている――ではなく、これだけのことしかできない。その気持ちを持ち続けることが、もしかしたら、入居者さんの気持ちに寄り添うことかもしれないと、夕暮れの淡い光の中に佇むとき、私たち職員も、そして〈ひかり〉も、ふと考えたりします。

■夕暮れの風景

youtu.be

miraireport.hatenablog.com