〈ひかり〉楽しみのある日々

 楽しむと一言で言っても、かなり難しいテーマです。楽しみ方は色々ですし、ひとりのひとに楽しみ方が一つということもありません。
 歌を楽しむ入居者さんもいれば、コーヒータイムを楽しむ方、菜園であったり、食べることであったり等など――入居者さんお一人お一人が生活の中で自分なりの「楽しみ」を持っておられます。

 皆さんの、楽しみはなんでしょうか?
 ちなみに、私はご飯を食べることと、写真を撮る事です。もともと写真を撮ることは好きでした。今はそれが仕事にもなっています。
〈ひかり〉でのわたしの仕事はいろいろとありますが、その中のひとつに、入居者さんの日々の暮らしを、記録するということがあります。
 入居者さんの日々の様子をカメラに収めるということです。カメラのレンズ越しに見える入居者さんは、本当色々な表情を見せてくださいます。笑顔だけでなく、一生懸命な顔や、ちょっと困っている顔、寂しそうな表情をみて、心配になるときもあります。
 入居者さんのいろいろな表情を見ることができることは、本当に幸せなことだと思うことがあります。人には本当にいろいろな表情があるのだと、密かに感心しています。

〈ひかり〉の女性入居者Mさんの楽しみは、カレンダーです。カレンダーに一日の出来事を書き込んで行く。それがMさんの楽しみでもあり、日課なのだそうです。今回、Mさんにカレンダーをお渡ししたのはわたしでした。それもわたしの仕事になりました(笑)。とても楽しい仕事です。
 カレンダーを用意するとき、どんなカレンダーなら喜んでいただけるだろ――と、Mさんが喜んでくださる表情をあれこれ想像していました。
 今回、準備したカレンダーは5月にぴったりの鯉のぼりのイラストが描かれたカレンダー。イラストひとつでも、四季を感じて頂きたいという気持ちもありました。
 少しドキドキしながら、Mさんのところに行って、
「あの、これでいいですか」
 と、ちょっと緊張しながらカレンダーを差し出しました。
 Mさんは、少し驚かれたようでしたがすぐに笑顔になり、
「これ毎日楽しみで書いてるの。だからすごくうれしい。ありがとう」
 という言葉と、笑顔をくださいました。
 わたしが〈ひかり〉にきて間もないころは、入居者さんの笑顔を見るのはいつも横顔でした。ですが、この日は横顔の笑顔ではなく、初めて私に向けられた笑顔でした。

 わたしは普段、直接、支援はさせて頂いていませんが、それでも入居者さんに笑顔になって頂けることが出来るんだということを知りました。そして、それを知ることが、やりがいにつながっていくのだということも理解しました。たぶん、現場で直接支援にあたる皆さんはこんな気持ちなんだろうなと、わずかですが理解できたような気がします。
 カレンダーを渡す。たったそれだけのことのようで、でも、この出来事からとても大切なことを、わたしは学びました。私たちは、入居者さんたちに笑顔や喜びを与えているのではなく、逆に入居者さんから、仕事への情熱ややりがいをいただいている。
 この出来事があってから、入居者さんの笑顔を見られるということが、私の「楽しみ」の一つになりました。

「自分にとっての楽しみって何だろう……」
 と、振り替えったとき、日常的に無意識にしている事でも、実はそれが「楽しみ」だったということもあるかもしれません。入居者さんの楽しみを知ることは、入居者さんをよく知ることなのだと、あらためて気づかされた出来事でした。
 入居者さんが楽しむことは職員も楽しめるということで、双方の相乗効果が、明るく楽しい〈ひかり〉を作っていくことができるのだと思いました。

■写真集 〈ひかり〉の日々

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