〈ひかり〉童心に帰って

 利用者さんたちが大好きな古い歌謡曲に「誰が故郷を思わざる」という歌があります。この歌を歌い始めると、間違いなく大合唱になります。皆さん、よく歌詞を覚えておられます。
 内容は、大人になり(それは成長するということです)故郷を遠く離れた人物が、故郷の野山で幼馴染と遊んだ日々を思い出すという内容で、この歌にうたわれている「故郷」とはつまり「子ども時代」のことです。井上陽水の「少年時代」は、この歌の現代版のようなものです。

 この歌のなかでうわたわれる故郷は、地理的な意味の故郷ではもちろんありません。つまり物理的な方法では絶対にいけない場所にある故郷、時間の彼方にある場所ということになります。

〈ひかり〉では写真で紹介しているような遊びをよくします。
※冒頭の写真、利用者さんが持っているのはゴム銃です。これを使って遊ぶ場合は、安全に配慮してフェイスガードをつけてもらっています。

〈ひかり〉で遊びを提供することは、それが、老若男女を問わず楽しいことだからです。
 しかし、それだけではありません。
 楽しいのと同時に、皆さんの心の中にある風景を呼び覚ましたいという思いも私たちにはあります。
 楽しく遊び、童心に帰る。
 それは、本当は手に入れることができないものを手に入れる行為かもしれません。童心に帰るために必要なことは、想像力を働かせることです。たとえば人気のジブリ映画。一連の作品を観ていると、想像力で世界も作り変えてしまうような子供たちがたくさん出てきます。
 成長するということは、とても大切なことですが、現実の重みに想像力の入り込む余地がなくなってしまうことかもしれません。致し方のないことですが、でも、錆びつかせてしまうにはもったいない人間の能力です。

 イメージを膨らませ、絶対に手に入らないと思っていたものが、ほんの一瞬でも、手に入ったように感じるとき、実際にそれを手にしたのと同じほどの喜びを感じられるのではないか。それを実現するためには、支援する側にこそ、見えないものでも見てやろうという気構えと努力が必要です(笑)。
 私たちは、遊びを通して利用者さんに、忘れかけている力を呼び戻していただければと考えています。
 童心に帰るということは、「誰が故郷を思わざる」にあるような、遠い彼方の風景を、一瞬でも見ることなのだろうと思います。想像することがはっきり何かの役に立つことはなくても、その人を幸福な気持ちにしてくれることは間違いのないことのように思えます。
 楽しいことは、多くの意味で正しいこと。私たちはそう考えています。

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