〈ひかり〉 入所施設の日常

 一口に入所施設といってもほんとうに様々です。
 たとえば〈ひかり〉。フルネームは『社会福祉法人名張育成会 高齢者グループホームひかり』です。介護事業の分類でいえば『認知症対応型共同生活介護』ということになります。

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 具体的にいうと、「認知症の利用者を対象にした専門的なケアを提供するサービス」ですが、これだけではよくわからないかもしれません。
認知症を対象にした専門的なケアを提供するサービスってなに?」
 という声がどこからか聞こえてきそうな感じです(笑)。
 もう少し詳しく申し上げます。
「利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、認知症の利用者が、グループホームに入所し、家庭的な環境と地域住民との交流のもとで、食事や入浴などの日常生活上の支援や、機能訓練などのサービス」
 と、いうことです。
 しかし、これも確かにその通りなんですが、まだちょっと……という感じかもしれません。
 このてのことは説明を始めると、どうしても固い言葉が並んでしまって、わかるようでわからないということになることが多いです。並んでいる言葉の意味は分かるけど、続けて読むとピンとこない、ということはよくあることです。
 論より証拠ということで、今回は先日行った消火器の訓練の様子をまず紹介させていただきます。

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 防災訓練はスタッフだけではなく、時に利用者さんにも参加していただきます。利用者とスタッフがともに暮らす家をともに守る。これもグループホームの日常のなかにある風景です。
 ようするにここは生活の場であるということです。
〈ひかり〉では9人の利用者さんと介護スタッフが共同生活を送っています。「認知症対応型共同生活介護」というと、何やら厳めしく、非常に特別な何かと受け止められそうですが、何も特別なことはありません。楽しいゲームをして笑い、歌を歌う。悲しいドラマを見て涙を流す。ちなみに利用者の皆さん、辛抱と苦労の一大巨編『おしん』をご覧になると、はらはらと落涙されます。豊かな感情がそこにあります。
 たとえ認知症があっても、美しいものは美しいと感じるし、悲しいことは悲しいと感じる。楽しいことは楽しいと感じる。そして、自分でできることはできるだけ自分でしてもらう。
 繰り返しになりますが、特別なことは何もありません。普通の暮らしです。

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 とはいえ、施設に入るということは、確かに非日常的な部分もあります。だからこそ、入所されるまで利用者さんが続けてこられた生活に、できるだけ近い生活を続けていただくことは、とても大切です。そのために私たちは個々の利用者さんの生活パターンを大切にします。そこで登場するツールが『24時間シート』です(説明は省力します)。
 日々の暮らしに話を戻します。同じ日常が続くことは安心につながります。同時に新しい発見があれば、楽しくなります。たとえば消火器訓練。あれなど新しい発見のひとつです。利用者さんもスタッフも楽しそうでした。
 スタッフである私たちの究極の理想は、自分が歳を取り、こういった施設に入所したとき、そうあってほしいというサービスを提供することです。サービスの提供の中にはあらゆるものが含まれます。建物もサービスのひとつです。〈ひかり〉の建物は、落ち着いた感じのとてもいい建物です。
 自分が受けたいと思うサービスの提供――しかし、これは言うは易く行うは難しの典型でして、努力の日々を送っています。
 いまうっかり努力の日々と書きました。
「努力」というと言葉の持つ響きから、昔のスポ根ドラマ(これを知っている人はある年齢以上かもしれません、気になる方は調べてみてください)をイメージされそうですが、そんなことはありません。本来、努力とはとても楽しいものです。好きこそものの上手なれという、あれです。
 スタッフが、まなじりを決して、深刻な顔をしてサービスを提供していたのでは、どんなに素晴らしいサービスを提供しても、利用者さんに安心・安全・安楽を届けることはできません。安心と安全はあるかもしれませんが、安楽という生活の質にかかわる大切な部分が、抜け落ちてしまいます。
 生活には、この暮らしはずっと変わらないはずだという安心感が必要です。それが日常です。しかし同時に驚きと発見がなければ心が豊かになりません。それが非日常です。
 日常と非日常のバランスが生活していくうえで大切なことだと私たちスタッフは考えています。とても難しいことですが、それを目指して日々、利用者さんとともに生活をしたいと願っています。

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