〈ひかり〉テーマとストーリー

 タイトルだけを見ると、「何のこと?」と言われそうですが、今回のテーマは理念とクレドについてです。
 法人に理念とクレドがあるように、〈ひかり〉にも理念とクレドがあります。〈ひかり〉は小さな事業所ですので、理念もクレドも、こじんまりとした可愛らしいものです。

■理念

クレド

 いまさらのことですが、理念というのは、「ものの原型」、〈ひかり〉という事業所の根底にある不変的な考え方のことです。クレドは、理念をより具体的な行動へと落とし込んだものです。
 理念は抽象的なものですが、クレドはそれよりも具体的になります。理念は不変と書きました。しかし、クレドは変化する場合もあります。状況によって、進歩(成長)によって「流動的に活用」されるものだといいます。

 さて、ここからがタイトルと関係してきます。理念とクレド。それは、物語におけるテーマとストーリーの関係のようなものだと考えています。マンガ、アニメ、テレビドラマ、映画、小説等々様々な物語がありますが、登場人物や舞台装置を取り払ってみると、皆同じ構造です。主人公がいて、色々な困難を乗り越えて成功する、あるいは失敗をする。言ってみればそれだけのことです。ストーリーは類型的で、どんな話もある形にほぼ収まります。ストーリーに違いはないと言い切ってもいいかもしれません。
 では、違いはどこに生まれるのか。面白いか面白くないか、その差はどこで決まるのか。テーマで決まってきます。その物語がストーリーを通して「なに」を伝えようとしているのか。その「なに」に当たるものがテーマだということです。

 理念を物語におけるテーマだとします。クレドをストーリーとします。クレドが実際の支援に活かされるかどうかは、理念を職員がしっかりととらえているかどうかです。
 理念もクレドも人あってのものです。その人が、理念についてどう考えるかによって、その人の行動が変わってきます。つまり同じクレドによる行動でもあっても、理念を理解していれば、より質の高いものになるということです。逆に言えば、理念について全く意識したことがなければ、クレドは実行されないという場合すら起こるかもしれません。

 支援にそれほど大きな違いがあるわけではありません。たとえば、食事、入浴、排泄、更衣、移動等々、施設によってやり方がまるで違うということはないはずです。少なくとも介護系のサービスの場合、極端な違いはないだろうし、何よりも職員に求められるものもだいたい同じです。で、あるならば、違いはどこで生まれるのか。結局のところそれは、職員の行為行動における質の違いだということになります。仕事の質は理念を意識しているかどうかによるのではないでしょうか。

〈ひかり〉のクレドに当てはめてみます。たとえば〈ひかり〉のクレドにある「えがお」です。理念を意識していれば、自然に笑顔も出てくるでしょう。「よりそう」についていえば、たとえばコミュニケーションのとりにくい利用者さんに対しても、粘り強く、優しく、寄り添うことができるはずです。理念を念頭に置いているかどうかの行動の差は、非常に大きいといえます。
 ある有名な漫画家氏が、テーマ(理念)とストーリー(クレド)についてこんなことを言っています。
「テーマはさりげなく、ストーリー(シノプスと本当は言ってます)は丁寧に」

 理念はさりげなく、クレド(行動)は丁寧にということでしょうか。
 理念は声高に言い続けなければならないものではなく、それぞれが自分の中にしっかりと持っていればいい、ということを「さりげなく」だとします。
 クレドを丁寧にということは、誰にでもできる当たり前の仕事を丁寧にしようということだとします。
 丁寧に仕事をすることで、当たり前の仕事が当たり前でなくなります。この丁寧な仕事をするという部分が、理念と関係してきます。丁寧な仕事というのは、細かいところを気にするということやルーティンに陥らないということも含みます。クレドは流動的であるというのは、何度もやっている同じ仕事でも、その内容を見直し、どこかに改善する点はないかと考える、良い方への変化があるという意味だと考えています。当たり前のことが、さらに良くならないかと考える、その考えることの原動力が理念です。
 不変である理念を自分の中に入れておいて、いま自分がしている仕事を見つめたとき、ここを変えれば、もっと良くなるというところが見えてくる。不変である理念と流動的なクレドの関係というのはそういうものではないでしょうか。

 理念を自分の中に入れるためには、自分なりの解釈が必要だと思います。自分の言葉で理念の意味を語ることができるということです。高尚で難解な言葉で語る必要はありません。今使えるだけの自分の言葉で、理念を解釈してみる。それが稚拙なものであっても気にする必要はありません。たとえ今自分が語ることのできる理念の解釈が稚拙なものであっても、勉強と経験によってどんどんレベルアップしていくはずです。
 しかし、人によって解釈が異なる場合、それで本当に良いのかという意見もあるかもしれません。統一した見解がなければとんでもなく的外れの解釈をしてしまうのではないか。確かにそのリスクはあります。ですからこの線は絶対に外してはいけないというものが必要です。それは基本的人権ではないでしょうか。この点についても某有名漫画家氏はこんなとを書いています。
「漫画はどんな表現も許されるが、基本的人権は絶対に踏み外してはいけない」

 理念について自分の言葉で語ることができれば、クレドを日々の支援の中で実践するための手がかりになる。そのように思います。
 また、理念の解釈、クレドの実践については、時々、皆と話し合うことも大切だと考えています。人と話し合うことで独善に陥るリスクも避けられるし、何よりも人の意見に耳を傾けることで、自分の考えを深めることができます。
 これが〈ひかり〉で働く私たちの、理念とクレドへの向き合い方、と言えばいいでしょうか。

※今回は動画ありません(^-^;

miraireport.hatenablog.com