【グループホームでの日常 ♯4 M氏の場合】
【AM 6:50】
出勤する職員を出待ちされ、開口一番に、
「おはようございます。今日は、9月9日やな。ワシの誕生日やねんっ。」
と、朝の散歩に出かけられる彼の表情がいつもより弾けている。
今日は、「特別な日」なんですね。
そうそう、彼が住まわれているGHの説明をさせて頂くと、奥から入居歴の長い御大と20代の若者。3人で同居生活をされています。
そんなM氏、20代の頃には、なんと陸上自衛隊に入隊されていたそうで
「その頃は、ようモテましてん。女の子が、キャーキャー言うてましたわ。」
と、時折、独り言のようにつぶやかれている…。
日々、体力の低下を痛感されているようで、「ワシも若ないからな。もう歳やわ。」
と嘆かれている。
けれど、今の生活以上に望むこともなく、
「今月も、ようさん稼いできましたわ。頑張ってきましたで。」と、毎月の工賃明細を得意げに手渡してくれる。
【PM 18:00】夕食
私が、「お誕生日、おめでとうございますっ。写真を撮らせてもらってもいいですか?」と尋ねると、
「すんませんな。もう、68ですわ。いろいろあったけど、ワシ一人で頑張ってきましてん。家族もみんなおりませんねん。」
と、少し照れくさそうに答えてくれました。
食卓には、お祝いの「お寿司とケーキ」をご用意させて頂きました。
夕食後、居室のガラス越しに写る姿を見ながら彼が過去のいろんなことを想い出されているのかな… と、感じました。
【AM 8:25】
翌日、いつもどおり通所先に向かわれる後ろ姿を見送りながら
「68年と〇日目ですねっ」と、心の中でしか応援できない私。
今日も、いい日でありますように…。