ブログのテーマについて考えるとき、どうしても特別な瞬間を切り取りたくなるのが人情です。しかし、入居者さんが過ごされる多くの時間は、特別でもなんでもありません。何事もなく過ぎていく、普通の日々がほとんどです。ですが、そういう時間を私たちは大切にしたいと考えています。ゆったりと落ち着いて、穏やかに。それがひかりの目指すところでもあります。
ひかりでは、入居者さんによく古い映画を観てもらいます。たとえば「椿三十郎」。
言わずと知れた黒澤明の大傑作時代劇です。ちなみにこの映画の原作となった小説のタイトルが「日々平安」でした。
そして、これも黒澤明の大傑作「用心棒」。
この二本の映画は時代劇に革命をもたらしました。いまではもう当たり前になっている殺陣の時に聞こえる、ドバッ! バシュッ! というあの人を斬る時の音。あの音が入ったのは「用心棒」からです。また切れらた人物から鮮血が飛び散る場面もこの映画からでした。
この映画で使われた斬るときの効果音は、吊るした牛肉を斬ったとか当時言われたそうですが、大きな牛肉を切ってもあんな音はしないそうです。どうやったかといえば、肉屋さんで売っている丸焼き用の鶏に割りばしを入れ、それを柳葉包丁でズバッと斬り、そこに雑巾をたたいて湿った感じの音を加えて作ったと言われています。
ちなみに今はキャベツを斬っているそうです(笑)。安上りですねえ。
閑話休題。こんな風に書くと、この「用心棒」「椿三十郎」ともに、ひどく残酷な映画のように思われるかもしれませんが、物語自体は大喜劇です。こんな話を深刻にやったら見ていられないということを、巨匠黒澤明はよくわかっていたのでしょう。リアルな殺陣と秀逸な喜劇的場面。どうです皆さん楽しそうでしょう。
観ていただくのは、派手なチャンバラ映画だけではありません。溝口健二の「雨月物語」。
時にはこういった映画も見ます。上田秋成(江戸時代の人)の怪談ですが、この映画には派手なチャンバラシーンはありません。しかし、白黒映画独自の美しさと怪しい雰囲気に皆引き込まれ、じっと見入っています。
それから、こういうものもあります。ごぼう先生なるにこやかな方の体操です。
画面に合わせて皆さんで体を使うこともやって頂いています。古典的な映画を鑑賞すること、テレビ画面のなかのお兄さんに合わせて体操すること。
時代劇もごぼう先生の体操も、みんな平穏な日々の中にあるということです。